2023年度

最終更新: (更新者 鈴木 靖

言語文化演習(アジアから見た日本)

 

【授業の概要と目的(何を学ぶか)】
 中国や台湾、韓国などアジアの人々の対日イメージと、日本人の自己イメージとの間には大きな違いがあり、良好な近隣関係を築く上での障害となっている。

 この授業では「アジアから見た日本」をテーマに、これらの国や地域と日本との政治的関係や文化的交流の歴史を概観するとともに、アジアの人々の対日イメージに大きな影響を与えた事件や人物に焦点を当て、それらが当該国や地域で、いまどのように伝えられているかを学ぶ。

 

【到達目標】
 アジアの人々の対日イメージがどのように形成されたかを理解し、日本とアジアという双方の視点から問題を考える力(「共感力」empathy)を養い、国際社会人としてアジアの人々と円滑な異文化間コミュニケーションを行う力を身につける。

 

【授業の進め方と方法】

 春学期は、台湾について学ぶ。日本台湾交流協会が昨年1月、台湾人を対象に行った意識調査によれば、「最も好きな国」として60%、「最も親しくすべき国」として46%が日本を選んだという。その一方で、「最も好きな国」として中国を選んだ人は5%、「最も親しくすべき国」として中国を選んだ人は15%だったという。こうした台湾の人々の対日、対中イメージは、どのように形成されたのであろうか。日本統治下の台湾に生まれ、日本に留学し、戦後、国民党政府による白色テロで処刑された葉盛吉の日記と、友人の証言をもとに、その歴史的背景を考えてみたい。
 秋学期は、日中の文化交流史について学ぶ。昨年度『日中友好新聞』に連載した「日中文化交流史」24回をもとに、日中の文化交流史を概観するとともに、日本各地に伝わる交流の史跡や文化を調査し、インターネットを通じて内外に情報発信していきたい。
 また、これらの学習と並行して、アジアに関連したドキュメンタリー映像作品を制作する。

 課題や発表に対するフィードバックの方法としては、受講生全員が参加するLINEのグループを用意し、これを通じて全員または個別にフィードバックを行う。

 

【アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施】
あり / Yes

 

【フィールドワーク(学外での実習等)の実施】
あり / Yes

 

【授業計画】

月日 テーマ 内容 新聞 輪読
1 4/7 ガイダンス 一年間の学習目標と方法、計画について話し合う    
2 14

台湾人が見た日本の植民地支配

⑴ 台湾の“四大族群”

(輪読)pp.3-19

・プロローグ

・第一章 植民地台湾に育つ⑴

 出身

3 21

台湾人が見た日本の植民地支配

⑵植民地統治下の教育制度

(輪読)pp.20-38

・第一章 植民地台湾に育つ⑵

 台湾での公学校時代

 台湾での中学校時代

 日本への憧憬 

4 28

台湾人が見た日本の植民地支配

⑶植民地統治下の日本留学①

(輪読)pp.39-66

・第二章 日本留学の日々⑴

 浪人二年

 二高時代⑴

  入学後の苦悩

  民族の文化と伝統   

6
5 5/12

台湾人が見た日本の植民地支配

⑷植民地統治下の日本留学②

(輪読)pp.67-87

・第二章 日本留学の日々⑵

 二高時代⑵

  同郷人

  一寮の庶務幹事となる

  特別志願兵

  着物と羽織

  全寮弁論大会  

7 1
6 19

台湾人が見た日本の植民地支配

⑸植民地統治下の日本留学③

(輪読)pp.88-111

・第二章 日本留学の日々⑷

 二高時代⑶

  明善寮の庶務幹事となる

  ユダヤ問題と神ながらの道

  右傾

  国分大尉の侮辱

2 3
7 26 台湾先住民が見た日本の植民地支配

(調査報告)

・霧社事件と高砂義勇隊

8 6/2

台湾人が見た日本の植民地支配

⑹植民地統治下の日本留学④

(輪読)pp.112-146

・第二章 日本留学の日々⑸

 二高時代⑷

  再起

私との論争

二高生徒大会

八紘一宇批判とユダヤ問題批判

9 9

台湾人が見た日本の植民地支配

⑺植民地統治下の日本留学⑤

(輪読)pp.146-169

・第二章 日本留学の日々⑹

 二高時代⑸

中国への関心

第一海軍火薬廠で

敗戦前の世相

  二高~奥深き学び舎

10 16

台湾人が見た日本の植民地支配

⑻植民地統治下の日本留学⑥

(輪読)pp.170-204

・第二章 日本留学の日々⑺

 東北は我が故郷

 東大進学と日本の敗戦

  敗戦前の東京で

  敗戦後の東京で

  プロレタリア尾行

  女性と

  帰国

11 23

台湾人が見た戦後の台湾

⑴光復後の台湾

(輪読)pp.205-234

・第三章 台湾で生きる⑴

 幾重もの苦難⑴

  失望

  思想の左傾

  台湾大学での活躍

  私との再会

  大陸旅行

  H女史と

12 30

台湾人が見た戦後の台湾

⑵2・28事件と白色テロ①

(輪読)pp235-264

・第三章 台湾で生きる⑵

 幾重もの苦難⑵

  入党

  二人のヒューマニスト

  台湾大学を卒業して

  結婚

  赤狩り

  逮捕

  獄中で

  転向せず

  遺書と自叙伝

  判決 

13 7/7

台湾人が見た戦後の台湾

⑶2・28事件と白色テロ②

(輪読)pp.265-284

・第三章 台湾で生きる⑶

 千古風流の人物

  処刑

  その後

・エピローグ

14 14 まとめ ・戦後の日台関係 -
月日 テーマ 内容 調査
15 9/22

日中文化交流史⑴

⑭東アジアの平和の礎となった思想―儒教

㉔朱舜水が残した友好の遺産

6 7
16 29

フィールドワーク

朱舜水のゆかりの地小石川後楽園を訪ねる

- -
17 10/6

日中文化交流史⑵

①わたしの祖先は縄文人?

②金印はホンモノ?

1 2
18 13

日中文化交流史⑶

③魏の使節が見た古代日本

④漢字がやってきた

3 4
19 20

日中文化交流史⑷

⑤隋の煬帝はなぜ怒ったのか?

⑥民の心を知るために~『詩経』と『万葉集』

5 6
20 27

日中文化交流史⑸

⑦倭から日本へ~日本はいつから日本になったのか?

⑧坂上田村麻呂と諸葛孔明

7 1
  11/3 大学祭による休講

 

   
21 10 日中文化交流史⑹

⑨「工匠精神」

⑩かなの誕生 

2
22 17 日中文化交流史⑺

⑪渡来僧から歯医者まで

⑫海を渡った画家~雪舟 

3 4
23 24 日中文化交流史⑻

⑬倭寇と秀吉の朝鮮出兵

⑮唐通事

5 6
24 12/1 日中文化交流史⑼

⑯科学技術を伝える~『農政全書』と『天工開物』

⑰江戸時代の中国語ブーム

7 1
25 8 日中文化交流史⑽

⑱島津重豪と琉球王国

⑲中国の初代最高法院院長になった清国留学生

2
26 15 日中文化交流史

⑳殷王朝の実在を証明した日中の研究者

㉑映画による戦時下の文化交流

3 4
27 22 日中文化交流史⑿

㉒憎しみの連鎖を断つために

㉓誤訳を越えた友好

5
28 1/19  

まとめ

- -

薛・楊・李:留学生は翻訳の仕事があるので、鈴木とペアを組んで行います

 

 

【授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)】
・発表者は、テキストの内容をまとめるだけでなく、それを補充あるいは反証する資料を紹介し、論理的思考と批判的思考をもって実証的な発表ができるよう準備する
・発表者以外は、テキストの当該箇所を精読するとともに、他の関連資料も事前に参照して、発表後のディスカッションに積極的に参加できるように準備する。
 本授業の準備学習・復習時間は各2時間を標準とします。

 

【輪読図書】
〔春学期〕
・楊威理『ある台湾知識人の悲劇』(岩波書店 1993年)

・『葉盛吉日記(一) 1938-1940』(中央研究院 2017年)

・『葉盛吉日記(二) 1941』(中央研究院 2017年)

・『葉盛吉日記(三) 1942-1943』(中央研究院 2018年)

・『葉盛吉日記(四) 1944.1-6』(中央研究院 2018年)

・『葉盛吉日記(五) 1944.7-12』(中央研究院 2018年)

・『葉盛吉日記(六) 1945』(国家人権出版社 2019年)

・『葉盛吉日記(七) 1946-1947』(国家人権出版社 2019年)

・『葉盛吉日記(八) 1948-1950』(国家人権出版社 2019年)

・『葉盛吉獄中手稿與書信集』(国家人権出版社 2021年)

〔秋学期〕
・『日中友好新聞』2022年1月1日号~12月15日号

 

【参考書】

 授業の中で適宜紹介する