第10回 五代十国時代 書籍出版の始まり
南北朝時代、中原を支配した遊牧民族は、漢民族の高度な文明に対抗し、支配下の諸民族との共生を図るため、西域から東アジアへと新たな文明を伝えました。仏教です。
サンスクリット語の経典が東アジアの共通語(Lingua franca)である漢語に翻訳された結果、南北朝時代から隋、唐時代にかけて、東アジアに仏教という世界宗教が浸透していきます。
仏教の伝来は、中国に「変文」という新たな庶民文芸を誕生させます。19世紀の末、シルクロードの仏教石窟から、この変文を含む数万点の古文書が発見されました。「敦煌文書」です。
巨大なタイムカプセルともいうべき敦煌文書の発見によって明らかになった唐代の庶民文芸について考えます。